FIPとは?猫の病態・ウェットとドライの違いを解説
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)とは、猫の体内にいる猫腸コロナウイルスが変異して全身の炎症を起こす、進行性の病気です。FIPには大きく分けて4つの型(ウェット型、ドライ型、神経型、眼型)があり、型によって症状も経過も異なります。かつては非常に予後の厳しい病気とされてきましたが、近年はEIDD-1931などの抗ウイルス療法によって寛解を報告する飼い主も増えています。
ここでは、FIPとはどんな病気なのか、その病態と分類、進行の流れを、パウレント(Pawrent)の皆さんがスマホでも読みやすいように整理してお伝えします。まずは全体像から見ていきましょう。
自宅でくつろぐ猫。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)とは何ですか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)とは、猫腸コロナウイルス(FCoV)が猫の体内で変異し、白血球(マクロファージ)に感染して全身に炎症を広げる病気です。多くの猫が持つ無害な腸コロナウイルスが、ごく一部の個体で病原性を持つ形に変異することが引き金になると考えられています。
FIPは人にはうつりません。あくまで猫の体内でウイルスが変異して起こる病気であり、猫から人への感染は報告されていません。
発症しやすいのは、免疫がまだ未熟な子猫や若い猫、そして多頭飼育やストレスの多い環境にいる猫です。純血種でやや多いという報告もありますが、どんな猫にも起こりえます。
FIPが疑われるサインは幅広く、初期は「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」「微熱が続く」といった曖昧なものから始まることが多いです。見逃しやすい段階のサインについては、猫のFIP初期症状:飼い主が見逃さないためのサインも参考になります。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)の原因は何ですか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因は、猫腸コロナウイルス(FCoV)の体内での変異です。もともと腸に住みつく比較的おとなしいコロナウイルスが、ある猫の体の中で変異を起こし、免疫細胞に入り込んで全身に広がることでFIPが発症します。
腸コロナウイルス自体は、キャッテリーや多頭飼育の環境ではごくありふれたものです。感染している猫は多くいますが、そのほとんどはFIPを発症しません。
発症には、ウイルスの変異に加えて、猫側の免疫状態やストレス、遺伝的な体質などが関わると考えられています。つまり「FIPは他の猫からうつる病気」というより、「体内のウイルスが変異して起こる病気」と理解するのが正確です。
多頭飼育の場合、同居猫が必ず発症するわけではありません。過度に心配しすぎず、環境のストレスを減らし、体調の変化に早く気づくことが大切です。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)のウェット型とドライ型はどう違いますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)のウェット型(滲出型)は、お腹や胸に炎症性の液体がたまるタイプで、ドライ型(非滲出型)は液体がたまらず、臓器の中に炎症のかたまり(肉芽腫)ができるタイプです。この2つは進行の速さも見た目の症状も異なります。
ウェット型は比較的わかりやすく、お腹がふくらむ、呼吸が苦しそうになる、といった変化が現れます。ドライ型は症状が地味で分かりにくく、体重減少や慢性的な発熱として現れることが多いです。
実際には、ウェット型とドライ型がはっきり分かれず、両方の特徴を持つ「混合型・移行型」を示す猫も少なくありません。
分類 | 主な特徴 | よく見られるサイン |
ウェット型(滲出型) | 胸やお腹に炎症性の液体がたまる | 腹部膨満、呼吸困難、発熱、元気消失 |
ドライ型(非滲出型) | 臓器内に炎症性の肉芽腫ができる | 慢性的な発熱、体重減少、食欲不振 |
混合型・移行型 | 両方の特徴を併せ持つ | 上記が組み合わさって現れる |
MolnuFIPのFIP治療薬(有効成分EIDD-1931)は、ウェット型、ドライ型、そして混合型・移行型を対象としています。抗ウイルス療法の考え方については、FIP治療ガイド:EIDD-1931による抗ウイルス療法とはで詳しく解説しています。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)の神経型と眼型とは何ですか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の神経型は脳や脊髄に炎症が及ぶタイプ、眼型は目の中に炎症が起こるタイプで、この2つはウェット型・ドライ型とは別の、独立した型として区別されます。FIPは合計4つの型(ウェット型、ドライ型、神経型、眼型)に分けて理解するのが正確です。
神経型でよく見られるのは、神経系に特有のサインです。
けいれん(発作)
頭が傾く(斜頸)
ふらつき、バランスを崩す
麻痺
見当識障害(ぼんやりして反応が鈍い)
眼型でよく見られるのは、目に特有のサインです。
虹彩の色が変わる(目の色の変化)
目のにごり
目の中の炎症(ぶどう膜炎)
目の病変による視力低下
ここで大切なのは、「目の色が変わる」のは眼型のサインであって、神経型のサインではないという点です。この2つを混同しないようにしましょう。
なお、MolnuFIPのFIP治療薬(EIDD-1931)は、眼型FIPおよび神経型FIPには適応としていません。これらの型が疑われる場合は、自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。神経型・眼型では血液脳関門や血液眼関門の影響で薬の届き方が異なるため、専門的な評価が欠かせません。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)はどのように進行しますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、初期の曖昧な不調から始まり、放置すると数週間から数か月で全身状態が悪化していく進行性の病気です。進行のスピードは型や個体によって差があり、ウェット型は比較的速く、ドライ型はゆっくり進むことが多いとされています。
典型的な進行の流れは、次のようなイメージです。
初期:食欲低下、元気消失、原因のはっきりしない微熱が続く。
中期:体重が減る、被毛が荒れる、ウェット型ではお腹や胸に液体がたまり始める。
進行期:呼吸が苦しくなる、黄疸が出る、あるいは神経・眼のサインが加わる。
末期:全身の臓器機能が低下し、状態が急速に悪くなる。
重要なのは、進行を早く見つけて早く動くことです。FIPは進行が速いこともあるため、「様子を見よう」と長く待つより、気になるサインが続くなら早めに受診することが結果を左右します。
体調管理では、肝臓や腎臓など内臓への負担にも目を配る必要があります。治療中の体づくりや支持療法(サポートケア)は、獣医師の指導のもとで進めてください。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)はどう診断しますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断は、単一の検査で確定するのが難しく、症状、血液検査、画像検査、貯留液の分析などを組み合わせて総合的に判断します。1つの数値だけで「FIPだ」と決められる病気ではありません。
獣医師が確認する主なポイントは次のとおりです。
問診と身体検査(発熱、体重減少、腹部膨満などの有無)
血液検査(グロブリン高値、アルブミン/グロブリン比、炎症マーカーなど)
ウェット型では胸水・腹水の性状分析
超音波やレントゲンなどの画像検査
必要に応じてPCR検査など
診断は経験のある獣医師でも慎重を要します。だからこそ、飼い主が普段の様子を細かく伝えることが、正確な診断の大きな助けになります。
猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis / FIP)の治療にはどんな選択肢がありますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療の中心は、ウイルスの増殖そのものを抑える抗ウイルス療法です。MolnuFIPのFIP治療薬は、有効成分としてEIDD-1931を1カプセルあたり15mg配合しており、これはモルヌピラビルの活性代謝物である抗ウイルス成分です。ヒト用のモルヌピラビルのカプセルそのものではなく、純粋なEIDD-1931です。
研究では、EIDD-1931は比較対象の化合物であるGS-441524と比べておよそ7.3倍の効力を持つと報告されています(GS-441524はあくまで別の比較対象の化合物であり、MolnuFIP製品の成分ではありません)。
投与の目安は、体重2.5kgあたり1カプセルを12時間ごと、最長60日間で、いずれも獣医師の指導のもとで行います。用量や投与期間、モニタリングは獣医師が管理すべきものです。
2019年以降、世界で10万頭を超える猫がこうした治療を受けてきました。すべての猫が同じように反応するわけではありませんが、多くの飼い主が意味のある改善や寛解を報告しています。「完治するのか」という疑問については、猫のFIPは完治しますか?寛解の最新エビデンスで最新の考え方を整理しています。
なお、EIDD-1931には催奇形性の可能性が指摘されているため、妊娠中・授乳中・繁殖に使う猫には使用しないでください。この点は必ず守るべき安全上のポイントです。
治療には薬剤費だけでなく、検査や支持療法の費用もかかります。日本での費用感を知りたい方は、日本で猫のFIP治療費はどのくらい?費用の内訳を解説もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
猫伝染性腹膜炎(FIP)は人や他の猫にうつりますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)は人にはうつりません。他の猫については、元になる腸コロナウイルス自体はうつることがありますが、FIPを発症するかどうかはその猫の体内での変異や免疫状態によるため、同居猫が必ず発症するわけではありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)のウェット型とドライ型はどちらが重いですか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)はウェット型のほうが進行が速い傾向がありますが、ドライ型が軽いという意味ではありません。ドライ型は症状が分かりにくく発見が遅れやすいため、どちらも早期の受診と獣医師による評価が重要です。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の神経型や眼型にもこの薬は使えますか?
MolnuFIPのFIP治療薬(EIDD-1931)は、ウェット型・ドライ型・混合型を対象としており、神経型FIPと眼型FIPには適応としていません。これらの型が疑われる場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談し、専門的な評価を受けてください。
猫伝染性腹膜炎(FIP)は早く見つければ違いますか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)は進行が速いこともあるため、早く気づいて早く動くことが経過を大きく左右します。食欲不振や続く微熱、体重減少などのサインが数日続く場合は、様子を見すぎず早めに受診してください。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療中に気をつけることは何ですか?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療中は、獣医師の指導のもとで用量とモニタリングを守り、肝臓や腎臓への負担を含めた支持療法を並行して行うことが大切です。妊娠中・授乳中・繁殖に使う猫にはEIDD-1931を使用しないでください。
FIPは決して軽い病気ではありませんが、正しい理解と早い行動、そして獣医師との連携が、あなたの猫にとって最善の一歩につながります。治療の選択肢についてもっと知りたい方は、MolnuFIPで治療の選択肢を確認することから始めてみてください。最終的な診断と治療方針は、必ずかかりつけの獣医師と相談しながら決めていきましょう。



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